甘えたで、不器用でも



「ん?寂しいから」

「….…今日は甘えん坊さんなのですか?」

「そう。はやく俺のことかまってよ」

「……じゃあ、お皿拭くの手伝ってくれませんか?」



ひらひらと布巾を後ろに振り、やんわりと仕事をして。と催促をしてみる。



「じゃあ、ご褒美くれる?」

「……え」

「ご褒美」

「……なにがほしいのですか?」

「それは終わってから言う」



なにやら楽しそうな声音を耳元に落とすと、するりと布巾を奪った彼は鼻歌でも歌いだすのではないだろうかというくらい軽快にお皿を拭いていく。



「……私があげられるものなら」



ぽつりと呟けば、にこりと綺麗に口角を上げて微笑まれ、ん?と疑問が生まれた。


ああ、なんでしょうかそのお顔は……。


お皿を拭いただけで、高い時計とか車とかねだられたらどうしよう。そのときはとりあえず布巾を取り上げよう。全力でそうしよう。


そう心に決めて、拭いてもらったお皿達を私は棚に片付けていく。



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