甘えたで、不器用でも



「あの……なにか、ほかのものに変えていただくことは出来ませんか……?」

「不可能です」

「意地悪……」

「なに、そんなに俺のこと嫌いなの?」

「いや、」

「悲しいな、俺そんなに嫌われてたんだ」



お皿を拭いてもらったせいでなんだか話がよく分からないことになってしまった。こんなことなら手伝ってもらわなければよかった。なんて、後悔したってもう手遅れなのだけれど。


見上げた目の前の顔はゆるりと眉尻を下げて悲しそうな表情を見せる。そんな顔をされてもと思いつつ、彼の唇に視線を移して思わず顔が熱くなった。



「俺のこと嫌い?」

「……」

「あー、やっぱり嫌われてるのか俺」



ため息と共に吐き出された言葉を合図に、ぎゅっと抱かれていた彼の腕がするりと離れていき私の体は拘束から解放される。


そんな言い方、ずるい。そんな顔、ずるい。



「違う」

「……」



離れていく体温が寂しくて、思わず彼の腕に縋った。そんなこと言われたら縋るしかなくなる。


と、にやりと口角を上げて微笑む彼。なんて最低な彼氏だろうか。私で遊ぶのもいい加減にしていただきたい。



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