甘えたで、不器用でも
「違うの?じゃあなに?言ってくれなきゃ俺、分からないよ」
あなたは女子ですか?と言いたくなるようなその台詞に、思わずため息が漏れる。
ぎゅっと目を瞑り覚悟を決めた。
「あの、」
「うん」
「……す、」
「……」
「……す、き」
「……」
「…………です」
熱い、熱い、熱い。顔が熱くて爆発しそうだ。まるで全身が心臓になったみたいに、どくどくいっている。
耐えきれず彼の腕から手を離し、両手で顔を覆う。恥ずかしいから見ないでほしい。好きって伝えるだけでこの有様だというのに自分からキスなんてしたら、本当に私は死んでしまうと思う。
「真っ赤」
「……うるさい、です」
「可愛い」
「からかわないで」
ふざけるように、馬鹿にするような彼の声が暗闇で聞こえてさらに恥ずかしくなった。はやくこの場から消えてしまいたい。
と、
「からかってないよ」
今度は低くて甘い声音が耳元で囁く。彼の熱い体温に包まれた両手は拐われた。赤を隠すものがなくなり精一杯に俯くけれどそんなのは無意味で。