甘えたで、不器用でも
「なに?」
「な、なんでも、ないです」
「なに、見惚れちゃうくらいかっこよかった?」
「自意識過剰」
「だって、君にかっこいいって思われたいじゃない」
眉尻を下げて、悲しそうに笑いながら落とされた言葉は私の胸の中をえぐった。そんな顔しないでよ。なんとも思ってないくせに。寂しそうにしないでよ。
なんて答えたらいいのか分からなくて、嫌な沈黙が流れる。
「お客様、本日は七夕ですのでよろしければ短冊に願い事でもいかがですか?」
その言葉に助かったと、胸を撫で下ろした。
気を利かせてくれたのか、目の前にいたバーテンダーが短冊とペンを差し出してきた。
カクテルと同じ色、彼には黄緑色の、私には赤色の短冊。オシャレな演出だななんて思ってペンを握りしめる。けれど、書きたいことを頭に思い浮かべるだけで文字に書き起こすことはやめた。
だってどうしたって、彼との永遠を望んでしまうから。
これからもずっと一緒にいたい。
私だけを好きでいてほしい。
私だけを愛してほしい。
そんな我が儘書けるわけ、ないじゃないか。