甘えたで、不器用でも
「こちらはアラスカというカクテルです。カクテルの意味は、偽りなき心」
「……」
「すみません、出すぎた真似をして。しかしただのバーテンダーの一意見として聞いてください」
「……はい」
「私には彼と貴女様がお互いに思い合っているように見えますよ」
そう言ってバーテンダーはさきほど彼と私から預かった2枚の短冊を目の前に差し出した。
なんなんだ、本当に。今日は彼との関係を終わりにする為にここに来たというのに。
「なんなんですかね……あの人は……」
「ここから先はご本人様にお確かめください」
じんわりと涙で視界が滲んだ。
黄緑色の短冊に彼の筆跡で綴られた文字。
“七夕が誕生日の僕の大切な人を僕が幸せにしたい”
赤色の短冊には私が綴った文字。
“私の大好きな人を幸せにしてください”
ぽろりと溢れた涙は、次から次へと後を追うように溢れてくる。赤色のカクテルの入ったグラスを手にし、一気に飲み干した。
なにが、熱愛だ。私に愛してるなんて、一度も言ったことなんかないくせに。