甘えたで、不器用でも
するりと2枚の短冊は再びバーテンダーに拐われていった。
と、同じタイミングで「ごめん」と言って戻ってきた彼。涙を見せたくなくて必死に溢れた涙を指先で拭う。
俯いたまま、必死に音を集めて震えないようにぽつりと溢した。
「奥さん今日、誕生日じゃないでしょ」
「え、いきなりなに?」
私の言葉に同様した彼は焦った声音を漏らす。そしてひとつ小さなため息を溢した。
「短冊、見たな」
「……うん」
「お誕生日、おめでとう」
「……ありがとう」
彼の言葉ひとつひとつが、私の涙を連れてくる。
温かな彼の掌が不意に私の頭を撫でた。
「なんで泣いてるの?」
「……」
なんでバレてるかな。なんて思った時にはもう遅くて、優しい体温が私の涙腺をさらに崩壊させた。
優しくしないでよ。嫌いになりたいのに。