甘えたで、不器用でも
「……な、なに、言ってるの?別れたって……」
「だから、離婚した」
「なんで……」
「ほかに、どうしても好きな女がいるから」
嘘だ、嘘だ、嘘だ。そんなの、嘘だ。
「なのに、会った瞬間もう終わりにするとか言われるから、本当焦る」
「だってそんなの、」
ぎゅっと抱きしめられた体が熱くて、彼の体温は心地よくて。けれど小刻みに震えている彼はいつもよりどこか頼りない。
「本当に俺の勝手だって分かってる、分かってるけど、お願い」
耳元で囁き落とされる言葉は甘い。
「俺のものになって」
「……でも、その指輪は……?」
私が問えば「ああこれ」なんて言いながら、抱きしめた腕を解く。「よく見てよ」と目の前に見せられた指輪は前に見たものとは違うデザインで。
彼は後ろに振り返り椅子に置いていた鞄から小さな箱を取り出してこちらに向き直す。と丁寧にその箱をパカっと開けた。
そこには、彼がしている指輪と同じデザインの指輪が収められていて。