甘えたで、不器用でも



しかし、目を細めてあまりにも蠱惑的に微笑むものだから、私は何も言えなくなった。そんな顔狡い。彼から視線を外し、甘いそれを喉に流し込む。



「怒るなよ」

「怒ってないです、」

「……」

「……」

「……」

「……」



そうやってまた、優しく空気を震わせるところが確信犯なのではないかと思う。


なだめるように言ったあと、少しの間。それを埋めたのは彼だった。



「しょうがないだろ、」

「……、?」




「どんどん綺麗になるお前のこと、こども扱いでもしないと俺が保たないんだよ」



すっと彼に視線を戻せば、恥ずかしそうに顔を赤らめ、見るなと大きな掌で私の目元を覆う。空いてるいる方の手はまるで照れ隠しをするように落ち着きなくするり、するりと私の左指を遊んだ。


「言わせるなよ、ばーか」


暗闇の中で、小さく呟いたのが聞こえた。大人な彼も私と同じような不安を抱えていることが嬉しいなんて思ってしまうのは不謹慎だろうか。


するり、彼の掌から解放された視界に光が差し込む。そのままその手は私の首元を一瞬彷徨い、優しく左肩を抱いた。


触れた体温はやはり心地いい。



「てか、俺が用意した“いいもの”勘違いしないでくれる?」

「……?」

「カフェオレ、じゃないから」



私の肩を抱いていた彼の綺麗な指先が私の左手に重なる。先ほどまで存在していなかった、左手の薬指でキラリと光るピンク色の石。



「こっち、」



涙腺が、また、崩壊する。



「だから、泣くなって、」

「……ぅ、だって、」

「ずっと決めてたんだ。大人になる日に渡そうって」



涙で滲んで、よく見たいのに見れない。ピンク色が薄ぼんやり私の視界の中で揺らいでいる。







「だから、俺と、結婚して?」



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