甘えたで、不器用でも
「花火まだかな?」
「そんな上ばっかり見てたら危ないぞ」
「大丈夫だって、っあ!!」
「え!!」
着慣れない浴衣はいつもより歩きにくくて、履き慣れない草履は足の指を攻撃してくる。
人だらけの花火大会で波に飲まれぬよう、まだかまだかと花火を待ち空を見上げて歩いていた。
幼馴染の「危ないぞ」という言葉を無視して。
と、意識が上に集中し過ぎていた私は無残にも目の前の何かに盛大にぶつかった。
「い、痛、」
「あ、すみません」
痛い。なんて思うけれど自業自得もいいところで。
視線を向けた先には、ネイビーの浴衣に身を包んだ大人の雰囲気の男性。
よろけた私の肩はぎゅっとその人の両手に支えられ、倒れることなく済んだ。
「あ、あのすみませんでした。私がよそ見していたばっかりにぶつかってしまって」
「いえいえ、こちらこそすみません。僕が気づいていればぶつからずに済んだのに」
慌てて謝罪をすれば物腰柔らかく微笑むその人。なんて紳士だろう私がぶつかったにも関わらず「大丈夫?」と心配してくれるなんて。