甘えたで、不器用でも
カタカタと慣れない草履を鳴らして、手を引かれる。草履で足が痛いし、浴衣の帯はきつくて走りにくいし、このままでは着崩れてしまう。
せっかく髪も可愛くアレンジして、化粧も気合を入れて、新しい浴衣を買って、こんな奴にでも少しでも可愛く映りたかったのに。
紳士じゃなくても。優しくなくても。私にはずっと特別な人だった。だから嬉しかったのに、今日一緒にここに来れることが。
「ねぇ、」
「……」
「ねぇってば!」
人混みを抜け、屋台の並ぶ通りから遠ざかったところで歩く彼を引き止める。そろそろ足が限界に近づいていた。痛くて痛くてもう歩きたくない。
「離してよ。もう足が痛くてそんなスピードで歩かれたらついていけない」
その言葉にぴたりと止まった彼の背中に私は反応しきれず思わず背中にダイブしてしまった。
今日はぶつかってばかりで、嫌になる。
小さな公園と呼ぶにはあまりに殺風景な場所。足は止めてくれたが、一向に手を離してくれない彼。いったいなんなんだと前に回り顔を覗き込めば眉根を寄せて不機嫌な表情をしている。