甘えたで、不器用でも


だって、そうでなければおかしいのだから。


そうでなければ昔、彼を諦めた私の気持ちをどうしていいのか分からなくなるじゃないか。



「俺がへんなのは今日だけじゃない。もうずっと何年も前から俺はへんなんだよ」

「……なにそれ、意味が、わからな」





「俺は、お前のことが好きで好きで、さっきのあの男に嫉妬しておかしくなりそうだ」





あれ、好きってなんだっけ?
まるで時が止まったみたいだった。



「え、いま、なんて言った……?」

「うるさい、こっち見んな」



私が問えば先ほどまでの悲しい表情を、また怪訝そうな表情に変えてパッと立ち上がり私の指を離す。と、今度は目元を覆ってきて。


なんなんだまったく。ころころ、ころころ、表情を変えて。真っ暗な視界を作る彼の手をぎゅっと掴んで私も立ち上がる。


目元から彼の手を両手で剥がし顔を背ける彼を追った。


どくどくと、鼓動が早くなるのは期待と少しの不安からで。中学生の卒業式の日に似た、いまのこの状況が私を昔に引き戻した。


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