甘えたで、不器用でも



「ねぇ、もう一度聞かせてよ」

「……はぁ、もうなんなのお前」

「なんなのはこっちのセリフです。中学の時も呼び出しておいて勝手に帰るし」

「あれは、お前が俺の友達と仲良く話してるのにむかついて!」

「え、そうだったの!?」



そうだったのかと、あの時の彼の行動の意味を大人になってやっと知ることができた。でも、じゃあ、あの時の彼は私になにを伝えようとしていたのか。


私の期待通りならいい。昔も、今も。



「ねぇ、じゃあどうして今日私のこと花火大会に誘ったの?」



じっと視線を逸らさず見つめて問う。



「なにそれ、分かってるのに聞いてるの?分かってなくて、聞いてるの?」

「分かってるけど、本当に合ってるか確かめたいから聞いてるの」



「はぁ」とため息を吐いた彼は、コツンと私のおでこに自分のそれをぶつけた。あまりに彼の体温が熱くてびっくりする。


と、遠くでヒューッという音が響いた。



< 80 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop