甘えたで、不器用でも
「俺は、お前のことが好きだ」
バンっと、夜空に大きな大きな花が咲く。
「ほ、ほら、楽しみにしてた花火始まったぞ」
「……うん」
バーンッと、無数の花が咲いては散って、咲いては散って。チカチカと、夜空を彩った。
おでこを離され、彼は私に背を向けて空を見上げる。
けれど、私が先ほど握った手はそのまま。
恥ずかしくなって、もう一方の手で離そうとすれば、より力を込められ未遂に終わる。
「どうせまたぶつかったり、コケたりするんだから俺の手、握ってればいいだろ」
「……なに、それ」
「てかもう、ほかの男に触られるのとか嫌だし」
楽しみだった花火なんかそっちのけで、私はただひたすら彼の後ろ姿を見つめた。じっと花火を見ている彼はこちらに振り向いたりしない。
ねぇ、いまなにを考えてるの?
好きだなんて言っておいて、なにも聞かないなんてずるいじゃないか。