甘えたで、不器用でも
「ねぇ、」
「……」
私の呼びかけにも振り向かない彼。
ならばと、空いているほうの指を彼の背中の上でするり、するりと滑らせる。
「……」
「……」
「なに、その反則技」
「だって、無視するから」
真っ赤な顔で振り向いた彼は、眉尻を下げて優しく笑う。
「……じゃあ、俺と付き合ってくれるの?」
「なにそれ」
弱々しい彼の問いに思わず笑ってしまう。「俺と付き合え!」とか言ってくるのかと思っていたのに。でも、そういうことを言わないところがやっぱり私の気持ちを考えてくれてて、優しいななんて。
「私じゃダメなの?」
「まさか、お前じゃなきゃダメなんだよ俺は」
「……」
直球な言葉に思わず、声を失った。どきどきが加速しておかしくなりそうだ。