甘えたで、不器用でも



空になった飴の袋に彼が散らかした小包装の袋のゴミを集めて詰める。その量に思わず目の前の彼を見てしまった。これだけの飴を食べるなんて本当に信じられない。


ローテーブルの隣に置かれた小さな黒色のゴミ箱に袋を捨てる。
と、彼はそれを見ているにもかかわらずまたあの言葉を口にした。



「トリックオアトリート」

「……え」

「だから、トリックオアトリート」



にっこり。そんな効果音が似合う笑顔を貼り付けて。



「え、もう、飴残ってないよ」

「うん。知ってる」



あれ?この人は私に喧嘩でも売っているのだろうか。無いことを分かっているくせに。



「もう無いからあげられないよ」

「うん。やっと無くなったよ」

「えーと……」

「もう、口の中が甘くて、甘くて」

「飴……好きなんじゃないの……?」

「別に」



私の飴を全部食べ尽くしておいて、あんまり好きじゃない発言をする彼氏様。あぁ、もうこれは喧嘩ですね。


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