甘えたで、不器用でも
「来年のハロウィンは飴以外でお願いします。てか、ひとつにして。すぐ食べきれるもの」
「……あの、何様ですか?」
「ん?彼氏様」
まさかの飴にケチをつけ、来年のハロウィンへの催促までしてくるとは、とんだ我が儘彼氏である。
「てか、トリックオアトリート」
「だからもうないって言ったよね」
「うんだから、トリックオアトリート」
「……」
話の通じない目の前の男にイライラする。けれど、そんな私とは正反対に口元を緩めて嬉しそうにしている童顔中学生疑惑彼氏。
綺麗な顔でこちらを見るな。と悪口になっていない悪口を内心溢しながらじろりと彼を睨みつけた。
「そんな怖い顔しないでよ」
「誰のせいだと」
「厳しいな」
するりと立ち上がった彼はわざわざ私の左隣に移動してきて、自分の体重分ソファを沈める。本当になんなんだ。
ぴったりとくっついた体を離そうと、少しだけ空いているソファの右端へ逃げようとすれば虚しくも彼の腕に私の腰は捕まった。