甘えたで、不器用でも
「可愛い」
「はぁ……はぁ、」
やっと離れた唇からは、苦しんでいる私を見てドSなのかと疑いたくなる発言が。
「いきなり、なにするの」
「キス」
口の中が甘い。さきほどまで飴を食べていた彼の口内はいつも以上に甘くて、危険だ。本当に溶かされそうになる。
回った腕はまだ解けなくて、なんなら抱き締められる力は増していて。
「俺、トリックオアトリートって言ったじゃん」
「飴、あげたでしょ」
「でもさっき、もう無いって言った」
「全部食べたのは誰?」
「俺」
「じゃあ、」
なんて俺様だ。まるでジャイアンだ。
目の前の綺麗な顔は、ゆるりと唇を動かして「お菓子くれなきゃ、悪戯するよ」なんて目尻を下げながら呟いた。
「今日は、悪戯するの楽しみにしてたの」
「趣味悪い」
「でもまさか飴の袋持ってるとは思わなかった」
「だからって全部食べなくても」
「だってしょうがないでしょ。お菓子もらっちゃったら悪戯できないんだから食べ尽くすしか手段がなかった」
と、腰に回っていた腕の力が緩み、今度は両肩に両腕を乗せ、おでこに自分のおでこをコツンとぶつけてくる彼。
吐息が交わるこの距離にじんわり私の顔は熱くなる。