囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
そんな風に彰貴さんと過ごして数週間が過ぎた

相変わらず毎日左東さんの送り迎え付きで彰貴さんの家と職場の往復

出掛けられない代わりに
着替えなどは某有名百貨店の外商さんがホントにやってきて…

「身体に合うものをあるだけ出しておくようにとの指示でしたので…」

と、恭しく頭を下げながら大量の服を置いていかれた

おかげで…今シーズンに着きれないほどのジャストサイズのモノが揃ってしまった

(お金持ちってわからない)


他にもキッチンに欲しいものはないかと聞かれれば

「キッチンばさみがあれば欲しい…」と、伝えたら
ものすごく高級そうな包丁やキッチンばさみなどの刃物のセットが帰宅したら用意されていたり…

「君は気にすることはない…」

これが彰貴さんのいつもの言葉
そして…

毎晩のようにいつの間にか私を抱き上げてベッドに引き入れる

…ただ抱き締めて眠るだけで
朝になると黄色い部屋に戻っている

それについては何となく何も聞けずにいた





いつものように左東さんと入り口で別れロッカールームで着替えてからレストランへ向かうと途中で支配人に声をかけられた

「月島さん」

「はい、お早うございます」

着替えをしてフロアに向かおうとした私に支配人が声を掛けてきた

「あの…君、一体何者?」

支配人は青い顔をしている

「え?単なる従業員ですけれども…」

困惑していると…支配人は訝しげにこちらを見た

「だって…辻堂の御曹司…専務から直々に連絡が来たぞ…君を宜しく頼むと…どう言うことだ?」

彰貴さん…なんてことを…

けれど外では婚約者のフリをするのは条件なので
設定を思い出しながら説明をする

この設定も契約で決められているのだ…

「あ…えっと…実はまだ内緒なんですが…お付き合いをしておりまして、こ、こ、婚約しておりまして…」

「は?あ…そうなの?月島さん…じゃあこんなところで働いてるの!!普通に働かせるわけにはいかないじゃないか!」

ますます青くなる支配人に私が首を捻る

「へ?いえ…彰貴さんは今まで通りでと…」

「ムリムリムリ!未来のグループ総帥の奥様に料理なんて運ばせられないよ!」

そのまま背中を押されて受付に連れていかれた

「今日からここでお客様の案内をしてくれればいいよ」

「え…でもフロアの人が足りませんよ?」

いつも人が足りなくてかなりキツくなっているのだ

私が抜けたら…皆が大変になる…
その事は支配人も分かっている筈だ

「それは…」

「大丈夫ですよ…彰貴さんはちゃんと私の仕事に理解ありますから…フロアに出してください」


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