囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
なんだって急に彰貴さんは支配人に私の話なんてしたんだろう

「公式発表…と言うのは大袈裟に聞こえるだろうけれど…来週の親族会で那寿奈の事は紹介するから、それと父が関門かな……よろしく頼むよ」

「はい。よろしくお願いいたします」

つい先日もそんな話をしたばかりだったのに…



「いや月島さん…出来ないよ…何か失礼があったら私の首が飛ぶ…」

「私、仕事に不満なんてありません!
フロアのみんなやコックの皆さんと協力してお客様に美味しい料理を召し上がって頂く…素晴らしい仕事ができて幸せなんです!だから…首なんて飛びません」

「月島さん…」

支配人が力無く呟いた瞬間

「…支配人、見くびるな」

レストランの入り口から声が飛ぶ

「辻堂専務!」

「彰貴さん!どうしてここに?」

現れたのは少し不機嫌そうに無表情に
僅かに歪めた唇をした彰貴さんと秘書の男性だった…

「たまたまホテルで会議だったから…寄ってみたんだ」

予定もあるだろうに来てくれるなんて…と
不謹慎かなとは思ったけれど…少し嬉しくなった

「彼女は仕事に誇りを持っているからな…それをとりあげることなどしない…それに私はそんな事で人をクビにしたりもしない……当たり前だが仕事ぶりで判断するよ」

冷たい視線に支配人は縮み上がっている

「支配人、気遣ってくださって有り難うございます……大丈夫です……ご迷惑にならないよう……私、頑張りますから!」

あまりこんな事を言いたくないが……
支配人が彰貴さんの不興を買うのも良くないだろう

私が大丈夫だと言っているのだから引いてくださいと視線で伝える

「わ、わかった……今まで通り頼むよ月島さん」

「はい!」

支配人は私の手を両手でつかみ、握手を交わす

その様子を見ていた彰貴さんが私を呼んだ

「那寿奈……」

「はい」

近付くと彰貴さんが私の頭を撫でた

(え?……)

そしてうっとりしそうな綺麗なカーブを描く目を細めて耳打ちしてきた

「那寿奈はやりたいように仕事をしなさい……それと、今日の夜はここで食べるから…な?」

「え…」

「那寿奈が働く姿を見に行きたいんだ」

冷たそうな目は私に向けては見えなくて…穏やかだ

身体を離すとと元の冷たい目に戻り支配人に向き合った
秘書に何やら確認してから口を開く

「夜、会議終わりの20時頃に社長と軽く食べに来るから2席用意して貰えるか」

「は、もちろんでございます」

「じゃあまた後程…那寿奈仕事頑張って…」

「はい!彰貴さんもお気をつけて!」

少しだけ唇を柔らかく引き上げて笑って去って行く彰貴さん

< 17 / 81 >

この作品をシェア

pagetop