囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
ぼうっと見とれていると
支配人が盛大に息を吐き出した

「はああああ…緊張した…月島さんすごいんだね」

「え?何がですか」

「あの美麗冷酷男子にあんな甘い顔させてるんだ?」

すごいのは彰貴さんの演技で私は偽物…

虚しいけれどここは契約に従わなくてはならない

(私は愛されている婚約者…)

「…優しい方ですよ?彰貴さん…」

「ええ?厳しくて冷酷で有名…っおっと…」

それ以上はまずいと思ったのか支配人は慌てて口を押さえた

確かに…私も噂ではそう聞いていた
けれど短い期間とはいえ一緒に過ごすうちに…

それは違うのだと気づき始めていた

「誤解されやすい人なんです」

「へぇ…」

これは本当だと思うから私は微笑んだ

「じゃあ月島さん、今まで通りに頼むよ」

すると支配人はイマイチ納得してないようだったがこの話を切り上げて仕事の準備に入った

「はい、よろしくお願い致します」

取り敢えず…仕事は続けられそうだし頑張りますか!

気合いを入れてフロアの準備に取り掛かる





ランチタイムを終えて休憩を挟んでからディナータイムに入る今日は連休の中日だからか中々に混雑していた

ディナータイムに入る前に支配人から改めて社長と彰貴さんが来店する旨が伝えられた

「粗相の無いように」

従業員全員何だかピリピリしている

(やっぱりかなり怖れられてるんだ…)

ディナータイム

今日はとてもお客様が多くて…何だか近くでドラマの撮影があったとかでここの常連のベテラン俳優さんがスタッフや共演者を連れてやってきていた

騒いだりするお客様も居ないお店ではあるが
一応奥のスペースにお客様たちを案内し、私がサービスに当たる

「小野田さま、いらっしゃいませこんばんは」

「ああ。月島ちゃん!今日もお世話になるよ?
季節のコース人数分頼んでもいいかな」

小野田さまは私が入店してから何度か担当させて頂いた
主に時代劇で有名なベテラン俳優だ
奥様やご家族ともここによく通い、更には気に入った共演者をここに連れてくるのだそうだ

「畏まりました。それでは先にお飲み物をご用意致しますので担当の者と代わります」



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