囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「父さん、彼女が月島那寿奈さんです」

「初めまして、月島那寿奈です」

「ほう…本当にレストランで働く女性なんだな…珍しい」

彰貴さんが私を紹介したので私は頭を下げると痛いほどの視線が社長から発せられた

「今まで人形お飾りみたいな女とばかり一緒にいたのに
…随分毛色が違うじゃないか」

(ごもっともです社長)

今までたぶん美女ばかりが彰貴さんの隣には居たはずで

こんな平凡な見た目の女がまさか結婚したい相手だなんて信じられないだろう

「父さんは中身で選べと言ったじゃないか
彼女は堅実で仕事熱心な女性だよ」

「そうみたいだな、先程からクルクルとまるでハムスターのように動き回る姿は熱心に見えたな…お飾りにはならなそうだ」

おかしそうに笑う社長…

(え?これでいいの?)

「ハムスター…あぁ、確かに那寿奈は小動物みたいだな」

彰貴さんまでこちらをみて微笑んでいる

何やら二人の間で視線が交わされ納得したようだ

(まずは第一関門突破?なのかな)

「お前の気持ちはわかった。ではその件については後日また連絡するよ…那寿奈さん、仕事中に呼びつけて申し訳なかった」

「い、いえ!お越しいただいて有り難うございました」

社長は手をあげてから席を立ち
それを彰貴さん、支配人、私で入り口まで見送った

残った彰貴さんが私に耳打ちする

「まだ上で資料をまとめたりするから…一緒に帰ろう…勤務時間終了したらいつも通り鳴らしてくれ…」

「え?いや、彰貴さんお疲れでしょうから先に戻ってください!」

毎日帰りが遅いのだから今日くらい…
そう思ったのに彰貴さんは不機嫌そうに眉を上げた

「いいから…さっさと終わらせて来なさい」

「は、はい!!」

(ひー!)

その冷たそうな表情で優しい台詞を吐いたり…

(彰貴さんって不思議…)

その後は小野田さまを見送り、閉店作業に入ると支配人がやってきて私にもう上がって良いと言ってくれた

「専務にはくれぐれもよろしくと…」

「わかっています…大丈夫ですから…」

たとえ支配人が私にひどいことをしたとしても
…本当の恋人ではないのだから何とも思わないはずだ

あ、優しいから少し悲しむくらいかもしれない
それだけで嬉しい…

そこでハタと気付く

(え…私、何考えてるの?)

自分の気持ちは持ってはいけないもの…条件にあるのだから

『二人の間に恋愛感情を持ち込まない』








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