囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活

左東さんやハツエさんはすっかり私が婚約者だと誤解しているから…
けれど彰貴さんとの決まりもあり．．．嘘だとも言えず曖昧に笑ってしまった

…ハツエさんと左東さんと別れ
料理をしていると

「ただいま」

彰貴さんが帰宅した

「おかえりなさい…」

いつもなら声だけかけて２階に上がるのに今日の彰貴さんはそのまま私を抱き締めた

「ただいま那寿奈…」

少し疲れて元気のない声…

「夕食召し上がりますか？」

「あぁ、シャワーを浴びたら食わせてくれ……今日は何だ？」

身体を離すと彰貴さんはネクタイを緩めながら聞いてきた

「今日は豚の角煮を作ってみました…時間があったので…」

「豚の角煮か…お酒に合いそうだな…確か眠ってる紹興酒があるから出して一緒に飲んでみようか？」

彰貴さんは優しく微笑んで私の頭を撫でた

「はい…」

ぬいぐるみを可愛がるそんな感覚なのだろうかと思う

（確かに体についたお肉の具合はぬいぐるみチックかもしれない）

バスルームに消えた彰貴さんを横目に確認しながら…残りのものを仕上げる
時間があったのでご飯もお鍋で炊いてみたし…昼間のお礼もかねて美味しいご飯を食べて欲しかった

出て来た彰貴さんは先ほど頂いた肌触りの良いルームウェアを着ていた
スタイルの良い彰貴さんにはとてもスマートに似合っていてモデルのようだった

方や私はぬいぐるみのようで…ペアの形をしているのに
嬉しいのに似合っていなくて情けないような複雑な気分だった

じっと見ていると彰貴さんが不思議そうに首を傾げた

「どうした？」

「…いいえ…何でもありません…」

慌てて視線を戻して食事の支度を始める

テーブルに一緒に並べると彰貴さんはどこかから甕を持ち出した

「それが…お酒なんですか？」

「あぁ頂き物だけどな…ストレートでまずちょっとだけ味わってごらん？」

彰貴さんがナイフで封を切り紐をほどくと

甕から救い上げて小さなコップに入れてくれた

「さ、どうぞ…」

「頂きます…」

一口含むとまるでシロップのような甘みが広がる…

「美味しい」

「それは良かった…角煮に合うね…那寿奈の料理は本当に旨いな」

彰貴さんが豚の角煮をつまみながら嬉しそうに言った

暫く食べて…テーブルの上のお皿が空になったころ…彰貴さんが私をしっかりと見つめて来た

（静まれ心臓！！）

その艶めかしい夢見るような甘い瞳に囚われて…動けなくなる


「味だけじゃない…」

「え？」