囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
それからは家での彰貴さんは口調が砕けていき

毎日嬉しそうに私を呼び寄せて抱き締める

「那寿奈…この感触がたまらない…」

「那寿奈、癒して…」

抱き締めてきたり、甘いキスをくれたり

本当に…そこだけ切り取れば甘い甘い恋人生活だった

寝るのはすっかり水色の部屋でが定番になり…
堂々と彰貴さんは私を抱き締めて眠り

朝、彰貴さんの寝顔を拝む日も増えた

はじめの頃は朝は部屋に返さなくてはと必死に早起きをしていたらしい

(彰貴さんが幸せならそれでいい…)

毎日帰ってきてからバスタイムのあとにソファーに呼ばれて傍に行くと

「ぎゅううー、あぁ可愛い!いい香り!はぁ」

彰貴さんは私をしっかり膝の上に横抱きし、抱っこの体制で抱きついてくる

「お、お疲れ様です」

フニフニと背中に触れる手もぐりぐりと頭を肩口に擦り付けるような動きも
可愛らしくて心地よくて嬉しいけれど

気持ちは複雑だ…

「那寿奈がいれば安眠できるし、すっごく仕事が捗るようになったんだ
これってすごいことだと思わない?」

抱きついたまま、キラキラした黒曜石のこちらをみて嬉しそうに笑う彰貴さんが
とても愛おしい

「はい…それは良かったです」

「本当にありがとう…君がここに来てくれて本当に良かった」

彰貴さんの言葉に嘘はないのだろう
けれどこの関係は偽りの恋人で、期間限定で…

いずれ本当に彰貴さんが好きになる人が出てきて
きっとその人に簡単に取って代わられるのだ

だって彰貴さんは

(私を好きなわけではないのだから…)

「那寿奈、そろそろ寝ようか?」

暫く抱き締められたまま物思いに耽っていると
彰貴さんが私を今度は抱き上げた

「お、重いから降ろしてください!逃げませんから!」

「逃げるなんて思ってないよ」

優しい瞳が見下ろしていてそれを見るのが苦しいほど
心臓が早鐘を打つ

きっと彰貴さんは気が付かない

(こんなにも私は貴方が好きなのに)

本当におかしな関係がいつまで続くのか…そう思いながらも
彰貴さんの腕の中は心地よくて
いつまでも続いてくれないかなどと浅ましく願ってしまいたくなる




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