囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
いつの間にかシャワールームに置いてあった下着とルームウェアが脱衣所に用意されていて

(…は、恥ずかしい…)

けれど必要なので有り難く着て
そろそろと脱衣所を出ると…

扉を開けた所に彰貴さんが居た

「ゆっくり出来た?」

濡れた髪の彰貴さんが極上の微笑みを讃えてそこに立っていた

整い過ぎた顔にかかる黒髪も
美しい曲線を描いて上がる口許も

見ているだけで心臓が煩くなるほど素敵だ

「はい…」

「待てなくて…上で浴びてきた」

(あ、だから髪が濡れているのか……ん?)

「今なんと言いました?」

彰貴さんのセリフが引っかかって思わず聞くと

「待てなくてって言った…」

すぐに身体を持ち上げられる

「いや、あの?え?抱き枕にならすぐなります!降ろしてください!歩けますから!!」

いつもと雰囲気の違う彰貴さんに戸惑っておりようとすると
彰貴さんはアーモンド型の黒曜石のような光を放つ瞳でこちらを見詰めた

「だから…抱き枕だなんて思った事ないからな?…それに…晴れて婚約者に昇格したし、もう遠慮なく頂くぞ」

「い、頂く…?」

意味は子どもではないから分かりますけれど

(急展開過ぎてついていけません!!)

強くホールドされてそのまま螺旋階段を上ると
真っ直ぐに水色の部屋に連れて行かれ

いつもの夜の様にベッドに……

「はじめに言っとく……」

「へ?」

彰貴さんがバサリと前髪を掻き上げてからこちらを立ったまま見下ろせば……溢れ出る色気に卒倒しそうになる

ルームウェアから覗く鎖骨がきれいに浮き出て
全体的に細身な彰貴さんだけれど、程よく筋肉があり

…実は意外と逞しい胸元が今更ながら目についてドキドキしてしまう

(あ、あれ?最近はもう慣れて…いつもはこんなにドキドキしないのに)

「手加減出来ないと思う」

「え、あ、あの…?」

ゆっくりと彰貴さんの長い指が私の頬にかかりそれから隣に腰掛けてきて…顔が近づく

「好きだ……離さない、何があっても」

「はい…」

口付けが降ってきて
髪に彰貴さんの指が絡んだのが始まりで

互いの距離をゼロにして

全てをさらけ出して想いを繋ぐ  

吐息で会話をすれば甘い囁きが聴こえる

「あいしてる」

彰貴さんが二人の重なる輪郭に柔らかく囁けば

私もただ……

「愛してる」としか言えない気がした








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