囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
何度も何度も

彰貴さんが優しく繋いでくれたから
…夢中で泳いで、気付いた時には空が白み始めていた

二人でそのまま抱き合いながらベッドで微睡む

幸せな時間…

これを本当にしていいの?

期間限定にしなくて…いいの?

あまりに甘くて幸せでまだ実感が持てなかった

強烈な眠気に引き摺り込まれるように眠りに落ちていく

長い指が私の髪を撫でたのは眠りに落ちる寸前に感じられた








遠くから聴こえる泣き声にゆっくり足をすすめる

啜り泣く声は高い

(…子ども?)

そこは広い廊下だった…豪奢なシャンデリアが下がり、フカフカの赤い絨毯が敷かれた廊下はどこかの屋敷の廊下だろうか

その奥から泣き声が聞こえて近付くと
男の子が声を殺すようにけれど堪えきれずに啜り泣いていた

「どうしたの?おにいちゃん」

「な、…ヒック…んでもない…」

小さな男の子は精一杯強がって私から顔を背けたけれど大きな目からは涙が溢れていたし口許が悲しそうに歪んでいた

だから……

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

母がよくしてくれるように手を握って呪文を唱える

「だ、いじょうぶ…?」

「うん」

男の子はハッとするほど美しい大きな目で私を見詰めて
いた

何かしてあげたくて…私は手にしていたうさぎのぬいぐるみを男の子に押し付けるようにして渡した

「これ、あげる…わたしいらない、おにいちゃんこれでなかない…ね?」

「あ…ふわふわだね…気持ちいい…」

胸元に押しつけたぬいぐるみを男の子は頬にスリスリとしてから花が咲いたように美しく笑った

「ありがとう」

男の子は私のぎゅっと手を握った

「キミのてもふわふわだね…かわいい!」

そして…初めて、父以外の男性に頬にキスをされた

ものすごく可愛らしくて…カッコイイおにいちゃんに
とてもドキドキして…私は赤面した


そのまま景色は暗転する

(え?夢…?)

あれは……


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