囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
仕事を終えていつものように帰宅前に左東さんに電話を鳴らして切ると目の前に影が射した

(?)

見上げると坂下がニヤニヤとしながらそこに立っていた

「お客様、もう閉店でございます…」

「客じゃねーし、昨日はよくも恥かかせてくれたじゃん?」

坂下は目をスッと細めて厭らしく笑う

「もう関わらないでください」

「紺上のお嬢様が落ちぶれた家無しで……まさか紺上の家から勘当されているのも…知らないんだろ?辻堂のお坊っちゃんは?」

「それは…彰貴さんには何も関係ない話ですから」

(確かに坂下の詐偽に遭って…私は紺上の家から絶縁された)

「関係なくないだろ?お金持ち同士…繋がりないとでも思ってんのかよ」

坂下の言葉にピタリと足が止まる

「どういう意味?」

「そのままの意味だよ。紺上がお前を認めていないのなら辻堂に迷惑かかるんじゃねーかってこと…よーく考えるんだな」

確かに紺上家は辻堂家と肩を並べる一家だとは思うけれど

「なら貴方には不利じゃない……私が彰貴さんに捨てられたら、また無一文よ?脅す意味が分からない」

お金目的なら私が彰貴さんとうまく行くほうが脅せる筈だ

「金より……那寿奈が欲しい」

「は?」

坂下が私に手を伸ばす

「金のためにお前騙したけど……ホントにお前が好きだったんだ」

「そんなの信じられない……」

「本当だよ……じゃなきゃ2年も付き合わねーよ…なぁ那寿奈、戻ってこいよ…」

「馬鹿言わないで……じゃ、私帰るから…」

これ以上聞いていたくなくて早足に坂下の前を通り過ぎる

「よく、考えろよな」

「……」

考えるも何も、私が坂下の元に戻るなんて

(あり得ない)





入り口に行くと左東さんがいつものように立っていた

「お疲れ様です、那寿奈さん」

「お待たせして申し訳ありません……出ようとしたら話しかけられてしまって」

掛けてから坂下に呼び止められたのでかなりのタイムロスだった…

「大丈夫ですよ…さぁ、参りましょう」 

「はい」

車に乗る直前に左東さんが心配そうにこちらを見た

「今日はひどくお疲れのようですね…」

「え、あぁ…ええ、大丈夫ですよ」
 
開いた扉に滑り込むとグッタリと体がシートに沈む
さすがに疲れたようだ

「…少し手加減して差し上げないといけませんよ彰貴様」

「そう…みたいだな、大丈夫か?那寿奈…」

「ひゃあ!!」

シートに沈んだと思ったのに
座りこんだのは彰貴さんの上だった…

(なんでここに!!)
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