囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
「なんだその声は……可愛いけどな、フフフ
お疲れ様、那寿奈」

「は、い……お疲れ様です彰貴さん…」

そこには…穏やかな顔で彰貴さんが座っていた

「今日は早かったんですね?」

「ああ、比較的な」

私も遅番だと帰りが23時近いのに彰貴さんは大抵私より後だ

すると彰貴さんは膝の上に乗った私を抱き直して
耳打ちしてくる

「那寿奈に早く触れたくて…早めに切り上げたんだけどなぁ…」

いつもより低い甘い声は耳から落ちて
身体を痺れさせる

鼻と鼻を擦り合わせるようにすると今度はギュッと胸元に頭を引き寄せながら耳に口付けるように唇を寄せて囁く

「早く……抱きたい」

「…?!」

今まではただ、抱き枕になる意味だったけど
昨日、そのような関係になった今は同じセリフでも意味合いが全然違うわけで……

ゆっくりと顔を合わせれば
蕩けそうに甘い視線でこちらを見下ろしていて

(い、色気がすごすぎて私倒れます……)

硬直して声も出ずに口がパクパクしてしまうと彰貴さんは可笑しそうに笑った

「ちょっと疲れ気味みたいだからなぁ明日は休みだしゆっくりしような?」

「え?明日彰貴さん休みなんですか?」

(私は遅番だったはず)

「いや?オレは仕事だが…那寿奈は休みだろう?支配人から那寿奈を休ませたと連絡が来ていたぞ」

「知りませんでした」

顔色が悪いと支配人が気を使ってくれたのか…

「とにかく…ゆっくり明日は休むといい」




邸宅では今日も抱き上げられたままバスルームに運ばれそうになり、お願いして着替えは自分で取りに行こうとすると

「下にも用意してあるからいい。ほら、左東の奥方に頼んで同じものを取り寄せたからな?」

嬉しそうに見せてくれたのは同じブランドの肌触りの良いルームウェアが色違いやカタチ違いで何着か

(よっぽど気に入ったんですね…)

ポカンとして見ていると照れたのかうっすら赤くなった彰貴さんが額をポリポリと掻いた

「あー、すまない……那寿奈の趣味も聞かずについ…」

「いえ、これ着心地が良いので私も好きです…ありがとう御座います!」

気遣ってくれる彰貴さんが素敵だと思った

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