囚われの雑草姫と美麗冷酷男子の生活
ぼんやりしながらお風呂を済ませてあがると
彰貴さんがパウダールームで髪の毛を乾かしてくれた

「那寿奈の髪はふわふわしていて…手触りもいいし、何より那寿奈に似合ってて可愛いなぁ…」

癖毛で真っ直ぐではないし
決して手入れが行き届いているわけではないのに彰貴さんはそのふわふわの髪が良いといつも言ってくれるから

何だか擽ったいけれど嬉しかった

「よし、完了…さて、行くぞ?」

いつものように彰貴さんは私を優しく…抱きしめて額にキスを落とす

それから並んで歩いて寝室に行くのがいつもなのだけれど…

「あの…」

「ん?どうした?…あ…っ…」

それでは物足りなくて…
私から首に腕を回して引き寄せて…唇を押し当てる

「ん……っ…ふ…」

私から始めたのに…いつの間にか彰貴さんに主導権は移っていて…柔らかい唇が優しく私の下唇を食むようにくわえたり、舌の感触を味わうようにして動く

深くて優しくて甘いキス…

(この人と生きていきたい)

このままで居たくて中々離せずにいると

「どうしたの那寿奈…今日は積極的だな?
でも無理させたくないから…もうストップ」

と身体を離す彰貴さんは労るように
頭をポンポンと叩いてくれた

「これ以上はオレが我慢できないよ那寿奈…今日はゆっくり休ませてあげたいから、な?」




私の気持ちは複雑だった
こんなに良くしてもらっていても一緒に居てはいけないのだと思い知らされたばかりだからだ

先程の紺上の当主の言葉を思い出す

「お前がどんなつもりかは儂は知らんし、どうでも良い
しかし、紺上の名を汚したお前が辻堂の時期総帥の妻になる?それは気にいらん、周りにも示しがつかないだろう…
それならこちらは辻堂を潰すだけだ」

(ダメだ…そんなことさせられない)

「な、そんな事っ!」

「選べ那寿奈…紺上の名は捨てたとは言えお前はこの紺上トキヒサの孫だ…そこからは逃れられん、今すぐ辻堂の若造とは手を切れ、そしたら不問にしてやる」

脅しではない

この人なら確実にやるだろう

お義父さまや彰貴さんを潰すだなんて…
そんなことさせるもんですか

でもどうすればよい?

私はこの手を離せるの?

やっと手に入れた
…知ってしまった温かい手を再び離さなければならないだなんて

(残酷だ……)





「那寿奈、ほら…もう寝なさい…とても眠そうな顔をしてるぞ…」

「……彰貴さん…」

本当に眠くなってきた

身体が重い……

「ん?」

「……好き、(です…貴方が…)」

抗えない睡魔が体を襲う

…好きです

その声はきちんと彰貴さんに届いたのだろうか












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