月と握手を
序夜:朔月
世界が眠っている暗闇の中で目が覚めた。何か物音がしたわけでもなく、夜中に起きる癖があるわけでもない。何となく、瞼を持ち上げてしまっただけだ。
空には星一つなく、明かりとなる月も出ていない。消灯時間はとっくに過ぎているから、読書灯を付ければ、他の患者に咎められる。頼りにする光がない私は、小さく溜め息を吐き出した。
「新月……か」
何かが始まると言われている日。そんな響きには心が躍らないので、再び瞼を閉じようとする。でも、できなかった。ふと顔を上げた先に、淡黄色の光のベールに包まれた、若い女が立っていたからだ。
「……誰? あんたみたいなクラスメイト、見たことないけど」
「うん。だって、あたしたち初対面だもん。初めまして、羽賀宮柘季さん」
うやうやしくお辞儀をし、くすりと笑う女。腰まである紫がかった黒い髪に、存在感のある黄金の瞳。短めの袖がふわりと揺れる白いワンピースを着て、少しばかり宙に浮いている。オカルトや超常現象は全く信じないけど、こんな怪しい人に話しかけられてしまっては、目の前で起きていることを認めるしかなかった。
そもそも人間は浮いたりしないし、光を体に纏ったりもしない。だったらこいつ、幽霊なのかな。でも、それにしては綺麗すぎる。このアルト調の声も凄く心地いいし……そんな自問自答を繰り返していた私は、彼女に尋ねてみることにした。
空には星一つなく、明かりとなる月も出ていない。消灯時間はとっくに過ぎているから、読書灯を付ければ、他の患者に咎められる。頼りにする光がない私は、小さく溜め息を吐き出した。
「新月……か」
何かが始まると言われている日。そんな響きには心が躍らないので、再び瞼を閉じようとする。でも、できなかった。ふと顔を上げた先に、淡黄色の光のベールに包まれた、若い女が立っていたからだ。
「……誰? あんたみたいなクラスメイト、見たことないけど」
「うん。だって、あたしたち初対面だもん。初めまして、羽賀宮柘季さん」
うやうやしくお辞儀をし、くすりと笑う女。腰まである紫がかった黒い髪に、存在感のある黄金の瞳。短めの袖がふわりと揺れる白いワンピースを着て、少しばかり宙に浮いている。オカルトや超常現象は全く信じないけど、こんな怪しい人に話しかけられてしまっては、目の前で起きていることを認めるしかなかった。
そもそも人間は浮いたりしないし、光を体に纏ったりもしない。だったらこいつ、幽霊なのかな。でも、それにしては綺麗すぎる。このアルト調の声も凄く心地いいし……そんな自問自答を繰り返していた私は、彼女に尋ねてみることにした。
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