ブレイク!
ゲームスタート!?
「どうせ俺の後をつけてきたかなんかだろ? ビリヤードに興味もないくせに、こんなとこまでずかずか入ってきやがって」

そりゃそうだけど。
本当に本当のことだけど!

でも、ちょっとだけ。ちょっとだけかっこいいとか思っちゃったのも事実だったのに。

これはもう、前言撤回!!


「なんてこと言うんだよ、隼人くん! せっかくの女子なのに!」
「そーだよお。ビリヤード界で、女子は貴重なんだぞ?」

王子の背後からぐるりと腕を回して、友達の一人が私の前に顔を出す。
さらさらの髪に切れ長の瞳。肌は白くてきめ細やか。
まさに麗人という言葉がぴったりのその青年は、私を見ながらにこにこと笑った。

「本当、隼人ってばきっついよねえ。春からそう言って何人追い返したんだっけ?」
「ミーハーは嫌いなんだよ。練習する気もなねえし、うるせえし」
「いいじゃない。その中から名プレーヤーが一人くらい現れるかもよ?」

青年が王子を見つめると、王子はさっと目をそらした。

「いいんじゃないの? はじめなんてそんなもんでしょ」

男性にしては高めのよく響く声。
王子から離れ、ビリヤード台にもたれかかって笑う姿が絵になってる。

「私だって、かっこいいから始めたっていっても過言じゃないしさ」
「さすがヨシタカくん。心が広い」
「ありがと。唯人さん」

ヨシタカくんが、店員さんに向かってウインクする。

うわあ、かっこいい。
普通ならここでドン引きなんだけど。
本当、何やっても様になる人っているもんだ。

「……わかったよ」

不服そうな声で、王子はぼそりとつぶやいた。

「なら、やってやる。ナインボールで俺に勝てたら、好きなようにしろよ」

ちょっとまて。
ちょっとまて。
ちょっとまて!?

別に、最初からやりたいなんて一言も言ってないぞ!?
それにいきなりゲームだなんて、ルールも知らないんですけど。

「わ、わかったわよ。棒で球を撞いて、穴に入れればいいんでしょ」

だけど今日の私は、なぜかどうしてもここで引きたくはなかったんだ。


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