リオくんとの距離は、ベランダから10センチ。
リオくんの髪は柔らかいから、櫛で解かせば、すぐ癖なんて取れてさらさらになる。
それなのにリオくんは、身だしなみとか全然無頓着で、いっつも私が整えてあげるハメになるんだ。
ほんとは、それくらい早く自分でできるようになってほしいんだけど…。
なかなか私の想いは、リオくんには届いてくれない。
「できた!
もう起きて大丈夫だよ」
そう言って、リオくんの肩をポンポンと叩いた。
「わ~、ありがとナナ。
髪さらさらになったね」
「いいって。
それより早く行こ、遅刻しちゃう」
直した髪を触って喜んでるリオくんに声をかけると、急いで門を出る。
「うん、そだね。
じゃあ行ってくるね、ハチ」
リオくんはハチの頭を撫でると、タタッとこっちへやってきた。
そして門の前に、停めてあった自転車のスタンドを蹴って、そのまま押して歩き始めた。