リオくんとの距離は、ベランダから10センチ。
先輩はハハッと笑うと、テーブルにあった私の参考書に手を伸ばし、自分の方に向けた。
「おー、新しい単元入ったんだ」
「あっ、はい。今日からなんです。
でも全然わからなくて…」
「ふーん…」
先輩はしばらく参考書を眺めていたけど、急にこちらをじっと見つめて、そして。
「…教えてやろうか?」
ドキッ
「えっ…」
「どうせ塾まで時間あんだろ」
ニッと笑ってそう言った。
ウソ…。
教えくれるって…今ここで?
びっくりして何も言えずにいると、先輩はテーブルを挟んで向かいの壁付きソファを指さして。
「ここ座んぞ」
「えっ!?
あ、はいっ…」