リオくんとの距離は、ベランダから10センチ。



*



「……ごめん遅くなって」



出かける準備をして玄関を出ると、今日も、ハチの小屋の前にしゃがんでいるリオくんの背中が見えた。



私が声をかけると、リオくんはしゃがんだまま振り返って。



「あ、ナナ。

準備できた?」



ハチの頭を撫でながら、ニコッと笑った。



…ドクン。



「う、うん……。

できたよ、行こう」



でも、さっき着替えを見られたことを思い出しちゃって、まともにリオくんの顔を見れない。



うつむきながらそう答えると、キャンキャン言いながら寄ってくるハチをスルーして、先に門を出た。



はぁあ、どうしよう……。


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