偽物の気持ち
昼休みが終わる頃、教室に戻ったはずの徹が走ってやってきた。
「ごめん!春!数学の教科書貸して!」
「あ、うん。また忘れたの?ダメだよ、今度からは気を付けなきゃ。」
私はそう叱りながらも、内心は嬉しくてたまらない。
こうやって、私を頼ってくれる。
だけど、不思議なことが1つある。
いつも、数学の教科書だけを忘れている。
なんでだろう?
そう疑問に思いながら私は数学の教科書を渡した。
「ありがとう!春!」
「はいはい。早く戻りなよ。私も移動教室だから。」
そう言って私達は次の授業に遅れないように別れた。