偽物の気持ち
私は居るのが気付かれていたのかと思い歩いて成の方に向かった。
「先輩見てたんですね。」
「うん。猫かぶってたんだ。」
言いたいのはそんな事じゃない。
「はい。そーっすよ。先輩、こんな感じの俺だと好きにならないかなと思って。」
「そんなことないよ…」
私は、なんとなく気づいていた。
あの黒い笑顔も本当はそっちが素顔だったんだと。
私は、別れを切り出したかった。
だけどそれを成は言わせなかった。
「先輩。俺、本当に好きですよ。」
「うん…」
「だから、先輩、好きって言ってくれませんか?」
成は私の顎に手をやって顔をクイッとあげさせた。
成が私の瞳を真っ直ぐ見ていた。
私は、成の顔を初めてまじまじと見た。
綺麗…。
ただそれだけを思った。