偽物の気持ち
春が目の前にいた。
俺はてっきり、徹のもとに行ったと思っていた。
だけど、ここに来てくれた春。
嬉しくて初めて胸が締め付けられる感じがした。
「春…俺…」
「成、ごめんなさい。」
なぜ春が謝るんだ。
謝らないといけないのは俺の方なのに。
「春は悪くない。俺があんなこと言ったのが悪いんだよ。」
「ううん。私が悪いの。無視なんかして、あんな状況を作ってしまってごめんね。ただそれが言いたかっただけだから。」
そう言って春は屋上から出ていこうとした。
その腕を掴もうとしたが、春はもう行ってしまった。
偽物の自分で近づいた俺。
偽物の気持ちで付き合った春。
このまま終わらせたくない。
そう思ったのに動けない俺がいた。