誓いのキスを何度でも
シンさんは私達の部屋に入ると、周りを見回し、

「懐かしいな。
僕も母子家庭だったから…
小学校に入った頃、こんな部屋にしばらく住んでた。
片付けは僕が担当だったんだ。」
とシンさんは微笑み、私が床に置いた雑誌を拾う。

「果歩が頑張って子育てをしているのを見るのが嬉しかった。
自分もこうやって育ててもらったんだなって。
そう思った。
まあ、僕の母親は離婚して3年で金持ちの後妻に収まって贅沢に暮らしてるけど…
もちろん僕もね。」とニッコリ笑って、誠太郎のおもちゃを片付ける。

「トキちゃんって潔癖?」

と誠一が誠太郎とリビングテーブルに置いたピザのメニューを見てニヤニヤしながらシンさんに聞く。

「片付けるのが好きなんだ。いいだろ別に…」

「いいけどー。俺は気にならないな。
居心地いいじゃん『巣』みたいで…」

「誠一、それって褒めてないから…」と私が不機嫌になると、

「君はもう少し、果歩の役に立ったほうが捨てられずに済むと思うよ」
とシンさんが楽しそうに微笑む。

「俺は捨てられないよ。果歩に愛されてるし…」

「もう少し、謙虚になったほうがいいな。絶対はないんだから…」

ね。とシンさんは私の顔を覗くので、私はウンウンと大きくうなづくと

ええっ!?と誠一は驚いた顔をして、

「俺には誠太郎がいるもんね。」と隣にいる誠太郎に抱きつく。

「サクちゃん、あんまり抱きつかれると恥ずかしい」とメニューに釘付けの誠太郎にすげなく言われると、

「掃除スル?」と情けない表情で私の顔を覗くので、おかしくなり、

シンさんと私は顔を見合わせてクスクス笑った。








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