誓いのキスを何度でも
「兄さん、ゆっくりできるんですか?」とエレベーターの中で誠一は木下さんに聞いている。

「今日は話が出来るまで、帰らないつもりで来た」と少し笑った声。

「今日は鍋なんです。食べていってください」と誠一が微笑む。

「誠太郎くん、と言うんですね。こんばんは」
と木下さんは、目を細めて誠太郎に微笑みかける。

誠太郎がはにかんだ笑顔で
「こんばんは」とだけ言って、誠一の腕を掴んでいる。

「初めての甥っ子だな。こんなに突然会うものなんだな」と木下さんが感慨深そうに呟く。

「…俺も突然だった」と誠一が楽しそうに微笑む。

「…知らなかったのか?」

「ああ。でも、今は幸せだ。
果歩以外のオンナと一緒になる気はなかったから…」

「…そうか」と木下さんは呟いて口を閉ざした。



< 114 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop