誓いのキスを何度でも
私達は和やかに鍋を囲み、誠太郎がサッカーチームの事や、最近流行っている遊びについてや、学校で勉強した事を話し木下さんも楽しそうに聞いていた。

木下さんにコーヒーを飲んでもらっている間にに私がキッチンを片付け、誠一は誠太郎をお風呂に入れる。


「柏木さんは、ひとりで子どもを産むことに迷いはなかったですか?」

と木下さんは静かに私に聞く。


「…そうですね。
誰の子どもかわかってましたし…
どこで育てるかは迷ったかな。
両親に言ったら怒られそうだなとか…」

と笑って返事をすると、そうですか。と微笑んで私の顔を見た。

「私の母親はクラブで働いていて…
桜庭と知り合い、私を生みました。
桜庭との結婚を望んでいたのかもしれません。
それが叶わないとわかると、祖父母に私を預けたんです。
私が高校に入った時に母が突然事故でなくなり、私は祖父母から、父親の事を知りました。
桜庭は私の存在を知らなかったようです。
それでも…検査で実子だとわかると、私の生活を助け、学費も十分出してくれました。
私は父の役にたちたくて、
グループの跡を継ぐ、誠一さんの助けになるよう、経営を学び、父の秘書になる事が出来たんです。
父にはとても感謝しています。
誠一さんと会ったのは彼が日本に帰ってきた1年前です。
私は誠一さんと半分血が繋がっているだけですが…
誠一さんは私を兄と呼んでくれます。」

と私に静かに話した。

「それと…誠一さんを産んだ母親は病気ですでに亡くなっています。
今の母親はずっと父の秘書をしている女性です。
きっとあなた達の結婚に強く反対したのは…きっとその母親でしょう。
たぶん…自分の連れ子の女の子と誠一さんを結婚させたかった気持ちもあったのでしょう。
まあ、誠一さんはその女の子、『沙也加(さやか)』と言いますが、その子をとても可愛いがっていて…まあ、女性として見ることはないのですが…
誠一さんの今の母親は秘書として優秀でも、誠一さんの母親としては、良くない判断をしたようですね。
誠一さんはずっとあなたを愛していて…
あなたが突然行方がわからなくなって…きっとその事に両親が無関係ではないと…家とは関わらなくなってしまったし…
…すみません。
柏木さんに、今更こんな話をして…
また、苦しめる事になるかもしれない…」

と顔を歪める。

「かまいません。
誠一さんを愛していますから…
彼と今年の3月に偶然再会して、彼が私をまだ求めているとわかった時、
一緒に居られるよう、今度は努力しようと決めたんです。」

と私は少し微笑んで見せた。



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