誓いのキスを何度でも
私がリビングに戻ると、
2人はダイニングテーブルで向き合い、黙ってビールを飲んでいたようだけど、
私が誠一の隣に座ると、

「誠一さん、父はあなたが帰るのを待っています。
父は…癌です。
膵臓癌のステージ4で…
もう、治療は出来ないと…
肺と脳とリンパ節に転移がみられ、腎臓の機能も低下し、担当医には、後3ヶ月の命と言われています。」

「…なんで…そんな事に…」

と言葉が続かない誠一に

「1年前、心筋梗塞で倒れた時にわかったんです。父はあなたには話すなと…
誠一さんに桜花グループをすぐに継ぐように言ったのは、そのためです。
誠一さんに代表を継がせ、幸せな家庭を持たせること。
この2つが今の父の『やるべきこと』になっています。
誠一さんが出て行ってしまってから、父はずっと入院しています。
どうか、家に戻っていただけませんか?
果歩さんとお子さんが一緒なら…
どうですか?
勝手な事を言っているのはよくわかっています。
果歩さん、誠一さんと桜庭の家に戻ってくれませんか?」

と木下さんは深く頭を下げる。
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