誓いのキスを何度でも
「本当に勝手だな。
戻る気はないと何度も言ってる。
俺は外科医として、仕事をしたいんだ。
…それに…
俺たちを引き離して、果歩を傷つけ遠ざけた事も、
何処に行ったかわからないように記録を消し、
周りにも口止めをしていたのも、俺にはわかってるんだ。
…許す気はないよ。
これからは、果歩も誠太郎も俺が守る。
ふたりを傷つけるものには…絶対に近づけない。
自分達の勝手な都合で引き離しておいて、俺たちがどんなに苦しんだか知らないだろう。
果歩だってひとりで子どもを産んで育てるのがどんなに大変でだったか…
今、俺は誠太郎に『お父さん』じゃなく、『サクちゃん』と呼ばれているんだ。
誠太郎は父親は死んだと教えられて育ったんだぞ。」

誠一の静かな声が深い怒りを秘めているのがわかる。

「誠一さんが怒っているのはは当然です。
きっと…長い時間をかけなければ…
許すことはできないのかもしれません。
…でも、このまま、父が亡くなってしまったら…後悔しませんか?
桜花グループやあなたの事を心配させたまま、死んでいくのは、不憫ではありませんか?
我儘に仕事だけしかしてこなかったようにあなたには見えるのかもしれません。
…でも、あのひとが、あなたを愛しているのは確かです。
やり方は間違っていたのかもしれませんが、
あなたが幸せになるのを望んでいるんです。
どうしても帰らないというなら…
だったら、
父に教えてください。
誠一さんの幸せはどんなことか…
あなたが嫌なら、父と話し合ってグループは解散させればいい。
…喧嘩しても良いんです。
ただ、会いに来てください。
…父は不器用な人なんです。
あなたに会いたいと思っているのが、私にはわかります」

と木下さんは誠一の顔を見て話している。








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