誓いのキスを何度でも
2月に入った。

先月7歳になった誠太郎は誠一に買ってもらった補助輪のない少し大きなスポーツタイプの自転車を乗りこなすために目下公園で誠一と特訓中だ。(誠一も自分の自転車をすでに買い込んで乗らずに部屋で磨き上げ、ジムのバイクを漕ぎまくって誠太郎とサイクリングできる事をワクワクと楽しみにしている。結構、親馬鹿全開真っしぐらと思われる。)


そして、
毎週、誠一はお父さんのお見舞いに行っているけど、
お互い意見は平行線のままだ。

まあ、余命3ヶ月って言われていたのは、誠一の顔をみたら、ずいぶんと元気になっているらしいけれど…
(木下さんの大袈裟なお芝居だった可能性も、誠一は疑っている。まんまとお父さんに会いに通うようになっているし…
兄さんは俺よりずっと交渉ごとが上手いと誠一はため息をつく)



週末、サッカーの帰りにスーパーに3人で寄り、週末に何が食べたいか話ながら食材を選ぶ。

誠太郎がグラタンが食べたいと言ったので、
(もちろん、誠太郎の好物はシンさんに習ってある。)
マカロニや牛乳や、翌朝食べるパンやハムを買って誠一の部屋に行く事にする。

「果歩、冷蔵庫の中身とか、毎回揃えるの面倒じゃない?そろそろ一緒に住んだらどうかな?」

と小さなサイズの牛乳や、個包装のバターをレジ袋にしまいながら私の顔を見る。


「いいじゃない。キャンプみたいで…」と私が笑うと、

「サクちゃんちの大きいテレビでゲームしたい」

と誠太郎はくちを尖らせる。

「いいじゃない。週末、大きいテレビなんだから…」と私が先を歩きながら取り合わずにいると、
駐車場の車の側まで来たとき、

「果歩、サクちゃんと結婚するでしょう?」

と誠太郎が立ち止まって私を見上げる。

「だよなあ。果歩、俺と結婚するだろ?
一緒に住んでもいいじゃん。」

と誠一も誠太郎の隣に並んでたちどまる。

ふたりとも…
ずっと一緒に暮らしたいの?かな…



「…私は誠一のご両親に私達の事を許してもらってからって…思ってる」

と俯くと…

「果歩…俺がそれは待てないよ。
いつまでかかるかわからないし…
俺は…早く一緒に暮らして、果歩と誠太郎がいる家に毎日帰りたい。」

「ねえ、サクちゃん、僕達と家族になる事をお父さんとお母さんに反対されてるの?
…それって僕がいるから?」

「違うよ。そうじゃない。
…昔から反対なんだ。
誠太郎のせいなんかじゃない。」

「…昔も反対されてたの?
それって…果歩が嫌いだから?」

「それも…違うかな。
昔は若かったし…、
お父さんとは喧嘩ばかりしてたから…」

「…今も喧嘩してるんだよね。」と誠太郎は呆れた声を出す。

「いや、俺はちゃんと仲直りしようとしてるよ。」

「…じゃあ、僕も一緒に行って頼んでみる。
果歩と僕とサクちゃんを家族にしてくだいって…」


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