誓いのキスを何度でも
始まりの季節。
3月。

桜がちらほらと咲き始めている。
誠太郎が春休みに入って、私と誠太郎は誠一の部屋に引っ越しをする。

その前に私達は籍を入れる事にした。

2月の終わり、誠太郎がお義父さんに会いに行ってから、物事が急に動き出した。

突然、木下さんから電話があり、私の実家に挨拶に来ると連絡があって、私が慌ててホテルの料亭の個室をとる事にした。
だって、桜花グループの代表をもてなせるような家ではないし、両親も困るだけだ。

その次の日曜日。
木下さんが押す酸素をつけた車椅子に乗ったスーツ姿のお義父さんと同じくスーツ姿のお義母さんがホテルのロビーに現れ、
誠一と私と誠太郎が迎える。

お義父さんは昔よりかなり痩せた印象だけど、瞳には強い光があって気力がある様子だ。

お義父さんは満面の笑みで誠太郎に笑いかけ、

「誠太郎くん、元気だったか?」

と話しかけたので、私は驚いたけれど、誠太郎は笑顔で、

「なんて呼んだらいいの?」と誠太郎が聞くと、

「色々考えだんだが…「じいじ」がいいと思って…果歩さんのご両親より、ずいぶんと年上だしね。」と誠太郎に微笑見かけ、

「君はどうする?」とお義母さんを振り返る。

「私は…考えておきます」

と、少し微笑む。
あいかわらず、綺麗で有能な人に見える。

「じいじ、行こう」と誠太郎はお義父さんの手を取って、車椅子と一緒にゆっくり歩き、エレベーターに乗り込んだ。






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