誓いのキスを何度でも
私と誠太郎の部屋の荷物を全部運び出し、
空っぽになった部屋に挨拶をしてから、
誠一が家から持って来た、高級な外国車の助手席に座って区役所に婚姻届けを出しに行く。

誠太郎は、誠一の実子として届けを出す手続きをした。
…誠太郎にはまだ話していないけれど、
誠一が、戸籍なんて見るのはずっと後だと思うし、その頃には色々理解できると思うよ。
と譲らない気配だったから…

誠太郎は今日は私の実家にお泊りで、明日迎えに行く事になっている。

まあ、ふたりで新しい出発とささやかな引越し祝いをしたら…

という親心なんだと思う。

ありがたくお願いして、片付けに専念させてもらおうとおもっている。


何もなくなった狭い部屋の中で

誠一は私の指と自分の指に金色のマリッジリングをつけ、

「8年前からスタンばってた」

と大ぶりなダイヤモンドのエンゲージリングをマリッジリングの上にはめてくれ、

「この部屋を出たら、果歩は俺のモノだから」

と甘く、囁いていつもより少し上品なくちづけをしてくれた。


私はダイヤモンドの指輪を陽の光にかざし、

「お姫様になった気分」

と笑うと、

「これからは勤務医だから、たくさん贅沢はさせられないかもしれないけど、俺は果歩をずっと愛してるよ」

私を深く抱きしめ、また、くちづけをする。

「誓いのキスが多すぎない?」

と私は笑いながら、何度もくちづけを繰り返す、誠一の背中をぎゅっと抱きしめた。



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