誓いのキスを何度でも
病院を出て、リュウ先生の言葉を思い出しながらシンさんのスマホを鳴らす。

『もう、会えないかもって凹んでた。』

まあ、このところ、誠太郎の入学の準備や自分の異動で3ヶ月程連絡もしていなかったかな

でも、『来るもの拒まず去る者追わず』がモットーのシンさんは、他にもブラックホールに吸い込まれているお姉さま方が多くいるはずで…
私はレギュラーと言える関係ではないと思う。

会えなくて凹む
はありえない。



「はい」とひそやかな声がする。

「騎士(ナイト)は今日はリュウ先生の家にお泊まりなの。」


シンさんは誠太郎を『果歩の騎士』と呼んでいる。
誠太郎がいると、私はどこにも遊びにいかないから、男の人に誘われたり、危ない目にあうこともない。っていうことらしい。


「…うん。部屋に来る?」

「なにか、食べるものある?」

「パスタ作るよ」

「やった。シンさんのパスタ好き」

「果歩。…会いたかった。」

「…そんな事…言ったことないじゃない?」

「我慢してるんだよ。これでも…」

「年上だから?」

「まあね。リュウにバレちゃったし…」

「言いふらすようなひとじゃないでしょ」

「…別に僕は誰にバレても構わないよ。
ただ、リュウにカッコ悪い所を見られちゃったから。」

「…私に見とれてた?」

「そうだよ」

「へ?」

「早くおいで」とぷつりと通話が切れた。


…冗談…だったんですが…

どうした?

独身主義のプレイボーイ。

熱でもあるのかしら?



私は首を捻りながら、ナナコ先輩に『誠太郎のお泊り』のお礼の電話をかけて、誠太郎のはしゃいだおやすみの声を聞き、

車は病院に停めたまま、駅に向かい、
ワインとバケットを買ってシンさんの部屋に向かった。
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