誓いのキスを何度でも
私はため息ををついて、お風呂の中に沈み込む。

指導医について、当直明けだというのに、
家に帰ったら、木下さんが待っていて、そんな言い合いになった。

全くもう、
きっと母の差し金だ。

母は父が大切にしている桜花グループをどうしても解散させたくないのだ。

木下さんは本当はとても優しい人だ。
6年前から、父の秘書になって、よく家にも来ているんだけど…

私が医学生の間、
医師なんて、向いていない。と何度もくじけそうになった時、

「沙也加さんはとても優秀で、優しい人です。
医師になったら、僕も沙也加さんに診てもらいたいときっと思いますよ」

と私に笑いかけてくれ、
「勇気の出るアメです。」
とポケットにいつも入っているらしいミルクの味のアメをくれた。

それは甘くて優しい味で…

私はそれだけで安心して、
アメを舐めながら、また、勉強や実習に向かった。

いうなら、
ダメな私を医師にしてくれたのは
木下さんなのかもしれない。


それなのに…

桜花グループを継げ。とか

然るべき人とお見合いしろとか


ありえないって!!


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