誓いのキスを何度でも
2人目の出産は始まると早いらしい。
とよく聞くけど、

でも、陣痛の痛みには、慣れたらりしないようだ。

当然のように物凄く痛い。
骨盤がメリメリと音を立てているような気がする。
実際、音をたてていても、私の呻き声で聞こえないとおもうんだけど…

私が痛みに耐えて、ベッドの柵にぎゅっと掴まると、背中を、撫でている誠一の手にも力が入るのがわかる。

一緒に力まなくていいから、腰をさすって欲しい。

誠一は初めてのお産で舞い上がっていて、オロオロし、贅沢な個室の中で立ったり座ったりを繰り返し、ちっとも役に立っていない。

誠太郎は私にストローで水を飲ませる係を忠実にしてくれている。

「果歩、頑張って」

と励ます事も忘れない。

誠一も見習って欲しいと、思っていると、また強い痛みが襲ってくる。

「ううっ…!」

と私が体を丸めると、私の背中に当てていた手を止め、

「もう、ずいぶん進んでるんじゃないかな?
助産師さんを呼んでくる」

と誠一がまた、立ち上がる、

いいから、腰をさすってください!


と思ったところで破水したみたいだ。

私は自分でナースコールを押して、

「破水しました」

と言うと、助産師さん達ががストレッチャーでやって来て、
お産の進み具合を確かめ、
イキんじゃだめよ。もうすぐだから、分娩室まで待ってね。と微笑み、

「はいはい。お父さんはどいてて。」

と誠一を退けて、私をサッサと分娩室に運んだ。

誠太郎もいるから立会いは遠慮してもらい、産まれたら、分娩室に入ってもらう事にしてある。

「行ってきます」

と私が言うと、

「果歩、頑張って!」

と誠一と誠太郎が手を繋いで分娩室の外で立ち止まる。

私はできるだけの笑顔を作って分娩室に入った。

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