誓いのキスを何度でも
何度か陣痛に合わせて、力むとするりとベビーが降りていく感覚がある。

大きな産声とともに、

「桜庭さん、おめでとうございます。
元気な女の子ですよ。
うん、今のところ、問題はなさそうです」

と私が小児科のナースと知っている産婦人科のベテラン女性医師が子どもの身体を確認してくれている。

ここは以前、私達が務めていた桜庭総合病院。お義母さんが今、勤めている病院に産婦人科がないと知ると、特別室を空けて待っていてくれたのだ。

「お父さんも、誠太郎くんもどうぞ。
元気な女の子ですよー。」

と助産師さんがニコニコして2人を招きいれる。

…えーと、女の子には可愛い女の子ですよー。って言うんじゃなかったっけ?

私はまだ、朦朧とした夢の中にいるようだ。


誠一と誠太郎が部屋に入って来て、

誠一は私の手を取り、

「果歩、頑張ってくれてありがとう」

と涙を浮かべ、私の横に寝かされたベビーの顔を誠太郎と一緒にのぞき、

「小さいなあ、すごく可愛い」

と誠太郎はそっとほっぺたを突いて微笑む。

誠一はありがとうございました。

とスタッフにも深々と頭を下げて嬉しそうにしている。

私も、大きな仕事をやり終えた気分だ。



2、3時間おきの授乳に、眠れない日々。

いくつもの不安や、思うようにならない育児。



これからが、大変なのだと知ってはいても…

この小さな命が、有り余るほどの幸せを運んできてくれる事を

私は確信している。


それに今度は家族でこの子を育てられる。

誠太郎も、頼もしいお兄ちゃんだし、

誠一もいてくれる。

私もとても幸せで、温かい涙が溢れた。



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