誓いのキスを何度でも
私は大きく深呼吸をして、

「ちゃんと…考えます。
結婚したいって…思ったこともなかった。
誠太郎がいれば十分だって思ってたから…」

「わかってるよ。
もう、果歩とは愛のないセックスじゃ、嫌なんだよ。
俺は我儘になったんだ。
果歩が全部欲しくなったんだよ。」とニコッと笑いかけて立ち上がる。

私もつられて立ち上がると、

「恥ずかしいから付いてくるなよ。ちゃんとご飯食べて。
コーヒー淹れるから座って待ってなさい」

と言われてガタンとまた椅子に座った。

うわ。
恥ずかしいかも…

身体の隅々までお互い知っていたけど…

心の中は

ちっとも知らなかったって事だ。


食事の後、送ってくれると立ち上がったので、

車を病院に置いてきたと言うと、

病院まで送ると車を出してくれた。

今までこんな風に送られる事はなかった。

これからは普通の関係に戻る。



「再来週の土曜日。誠太郎と一緒にご飯どお?
昼に焼肉。男の子は肉食うでしょ。
先ずは美味しい飯を奢って誠太郎の胃袋を掴む作戦。」とふふと笑って職員用の駐車場に車を入れる。


えっと…ここに車を停めてるって事はもう、周りにわかっても良いって思ってるんだよね。

私が車を降りると、

シンさんも車を降りてきた。

「ご飯一緒に行きたい。」と私の手を掴んで引き寄せ、そっと抱きしめる。

ええ?

こんなところで抱きしめたりする?

「せ、誠太郎に聞いておきます」と慌てて腕を抜け出るけど、

案の定、看護師と思われる2人組が驚いた顔で通り過ぎていく。

「確信犯?」と聞くと、

「先手必勝。果歩を狙うガキどもに負けたくない。」とくすんと笑ってシンさんは車に乗りこむ。

私が呆れて立ちすくんでいると、シンさんは窓を開けて手を振り、走り去って行った。



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