誓いのキスを何度でも
誠太郎をなんとかなだめ、後部座席にのせ、
誠太郎の隣に乗り込もうとする誠一を助手席に座らせ、私はため息をつく。

「誠太郎、古い友達でお医者さんの桜庭さん。
ずっと、外国で仕事をしていて、
これからお母さんと同じ病院で働く事になったからって会いに来てくれたの。
ずっと、外国にいたから挨拶で抱きしめちゃったんだと思う。
もう、しないと思うから、嫌わないでくれるかな
今日は一緒にご飯食べようって思ってたんだけど…いいかな?」

「…」へそを曲げて返事をしない誠太郎に

「お母さんとは昔、仲が良かったんだ。
さっきは抱きしめてごめん。
もうしないから一緒にご飯食べてよ」
と誠一がシュンとして謝ると、

「…いいけど。ピザが食べたい」と誠太郎はここぞとばかりにワガママを言う。

ピザって宅配のピザの事だ。

我が家ではピザは誕生日。とかクリスマス。とかの贅沢品だ。

「…わかった。何にする?」と私が聞くと、

「やった!!明太子とバーベキューチキン!!」
と私と誠太郎の会話についてこれない誠一がキョトンとした顔をする。

私は車を発進させながら

「我が家で宅配ピザは特別な日の食べ物なのよ。
だから、ウチでピザ。でいい?」と誠一に言うと、

「え?家にお邪魔していいの?」

「…まあ、カッコつけてもしょうがないから、どうぞ。
狭い散らかった部屋だけどね。」と言うと、やった。と呟く誠一がなんだか可愛い。

そんなに喜ぶところじゃないよ。

きっと現実を知ってがっかりするはずだ。
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